診療情報管理士ってどんな資格?受験資格から難易度・勉強法まで徹底解説!
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医師
安藤広真
「診療情報管理士ってどのような資格なの?」
「診療情報管理士ってどのような仕事を行うの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
看護などの専門学校などに通っている人はピンとくるかも知れませんが、診療情報管理士は、病院などに勤めていないと聞き慣れない資格ですよね。
どのような資格で、どのような場面で役立つのか、勉強時間はどのくらい必要なのか気になる方は多いと思います。
そこで資格Timesでは診療情報管理士の基本的や情報や難易度などについて分かりやすく解説します!
診療情報管理士についてざっくり説明すると
- 病院においてカルテを管理したりするのが主な仕事である
- 管理した情報を生かして医療の発展の寄与できる
- 受験資格をクリアしないと受験できない
- 勉強は暗記が中心
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診療情報管理士ってどんな資格?
診療情報管理士は、メジャーな資格とは言えず医療従事者でなければあまり聞きなれない資格だと思われます。
診療情報管理士は諸外国ではHIMと呼ばれ、育成が進んでいます。
こちらの記事では、診療情報管理士がどんな資格なのかを説明します。
そもそも診療情報管理士とは
診療情報管理士は、医療機関でのデータ管理を担う人を養成するために出来た資格です。
医療機関における患者の診療情報を管理し、得た情報を国際統計分類等に基づいて収集・管理する専門職種です。
現在、多くの病院では診療情報を扱うための勉強をしたことがない人が業務を行っているのが実態です。
つまり、現場主義で未経験なのに実務を行っていることが非常に多いのです。
このような状況では、データが適切に管理されず、取り扱っている当人にしか場所が分からないなどの不便や問題が生じます。
このようの問題を解決するために、専門的な知識を持って診療情報を管理する資格・仕事が求められて創設された資格なのです。
診療情報管理士の主催団体
診療情報管理士の主催団体は一般社団法人日本病院会です。
加えて、試験合格後は四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)および医療研修推進財団の認定する「診療情報管理士」として登録されます。
つまり、多くの協会に認められる権威性の高い資格なのです。
診療情報は医療の発展で注目を集めて入る
近年は医療の発展により、膨大な診療情報を保険や福祉行政の企画・人口問題研究・医学研究等に役立てる動きが盛んです。
さらに、国際比較などにも活用する研究もされています。
日本病院会はこの分野に関してWHOと提携し、資格としても注目を浴びこれから盛り上がると考えられています。
診療情報管理士の難易度
それでは、資格の難易度はどの程度なのでしょうか?
診療情報管理士の試験範囲と出題形式
試験は、基礎分野と専門分野に分かれています。
医師・歯科医師など指定されている20の資格の内、どれかを保有している場合、基礎分野が免除される特例があります。
基礎分野は12章の設問があり、試験時間は1時間で100点満点のマークシート方式となっています。
専門科目は基礎分野と同じく12章の設問があり、制限時間は1時間で採点方法も100点満点の採点が適用されます。
以下、基礎分野の科目です。
- 医療概論
- 人体構造・機能論
- 臨床医学総論
- 臨床医学各論Ⅰ
- 臨床、医学各論Ⅱ
- 臨床医学各論Ⅲ
- 臨床医学各論Ⅳ
- 臨床医学各論Ⅴ
- 臨床医学各論Ⅵ
- 臨床医学各論Ⅶ
- 臨床医学各論Ⅷ
- 医学・医療用語
出題範囲が広いため、満遍なく理解する勉強が求められます。
一方、専門分野の科目についても見てみましょう。
- 医療管理総論
- 医療管理各論Ⅰ
- 医療管理各論Ⅱ
- 医療管理各論Ⅲ
- 保健医療情報学
- 医療統計Ⅰ
- 医療統計Ⅱ
- 診療情報管理Ⅰ
- 診療情報管理Ⅱ
- 診療情報管理Ⅲ
- 国際統計分類Ⅰ
- 国際統計分類Ⅱ
試験内容が非常に専門的であり、またITの知識も必要とされます。
基本的な勉強の進め方は、医学用語を暗記した上で各理論を整理して応用できるようにしておくことです。
インプットが済んだら問題集を繰り返し解いて、過去の出題パターンに慣れておくと良いでしょう。
診療情報管理士は、病院のカルテの情報をまとめて個人情報を守りつつ医療の発展に寄与する仕事なので、幅広い知識が要求されるのです。
診療情報管理士の合格率、合格ライン
気になる合格率や合格ラインですが、近年では 合格率は60% を中心に前後10%ほどの誤差がある状況です。
平成30年実施試験の合格率は66.3%、平成29年の合格率は44.5%、平成28年は53.1%という結果でした。
なお、診療情報管理士試験には受験資格が設けられており、条件をクリアしている人しか受験できません。
このことを踏まえても、試験の難易度は高いということが分かります。
なお、医療関連の資格では珍しく持ち込み不可の試験なので、知識を正確に覚えないといけません。
診療情報管理士試験は覚える量が非常に多いため、合格率の見た目以上に負担が重く大変な試験となっています。
合格点は明確には発表されていないものの、合計の得点率が60%以上と考えられています。
難易度としては、関連する医療系の資格と比べ、やや難しい水準にあると言えます。
診療情報管理士におすすめする人
診療情報管理士は患者の大事な個人情報を扱い保管するため、非常に責任が重い仕事です。
そのため、医師が書いた内容をしっかりと読み取る読解力や、記載ミスをしない緻密さ、正しく知識をまとめ上げる正確さなどの事務的能力が必要不可欠です。
これまでに緻密な事務処理経験がある人は適性があると言えます。
また、デリケートな情報も扱うため個人情報の大切さを理解し、決して漏洩など起こさずに慎重に扱う姿勢がある人でなければなりません。
医師や看護師との円滑なコミュニケーションも必須となるため、人付き合いが苦にならずしっかりとコミュニケーションを取れる人は診療情報管理士として活躍できるポテンシャルがあるため、取得するのがおすすめです。
診療情報管理士の勉強法
難易度が分かったところで、実際に試験に合格するにはどんな勉強をしていけば良いのでしょうか?
受験資格に注意
試験を受験するには、受験資格を満たす必要があります。
クリア条件は3種類あります。
-
大学や短大を卒業し、日本医師会が行う通信教育を修了すること(ただし現在病院に勤務している者は最終学歴が高卒でも可、医師や看護師など特定の資格を持つ者は専門課程への編入が可)
-
日本病院会に指定された大学・専門学校を卒業していること
-
指定校で3年生以上で、2年以内に卒業が見込まれること
よって、指定校に在籍したことのない人は通信教育を受けなければ受験資格を満たさないことになるため注意が必要です。
指定校は日本病院会公式HPで確認できますので、参考にしてみてください。
通信教育を受ける場合は大丈夫
通信教育の教材やカリキュラムは、試験に則ってかなり詳しくできているため、とても効率的に勉強できます。
勉強のモチベーションを維持できれば、勉強方法に困ることなくスムーズに勉強が進むでしょう。
就業期間は計2年となっており、最大で6年かけることができるのでじっくりと勉強する期間があります。
しかし、だからといって勉強時間を長く確保するほど合格率が上がる、というわけではありません。
試験直前などはある程度まとまった勉強時間を確保して集中的に勉強するべきです。
独学の場合はテキストを覚え続ける
試験では持ち込みが認められないため、勉強した情報をしっかりと覚える必要があります。
もっとも、通信教育の免除規定を受ける人は勉強するためのテキストがあるはずなので、その教材を使えば問題ありません。
なお、過去問は存在しないため、問題集も自分で選び揃える必要があります。
実際に書店で見てみて、自分が分かりやすいと感じたテキストや過去問を選ぶようにしましょう。
診療情報管理士の勉強をするメリット
資格試験の勉強のモチベーションにもなる、取得後のメリットについて解説します。
転職に有利
専任の診療記録管理者がいて、診療記録が疾病別に検索できるなど情報の管理などがきっちりなされている病院であれば、管理体制を評価するポイントが上がるようになりました。
かつて病院の中には、診療情報の管理の知識が乏しいスタッフを専任としたところもありました。
しかし、そのような人は診療情報の知識が乏しく、当然の事ながら効率が悪くなってしまい、専門的な知識を持った人と業務を交換したいという現場の希望が多く出たのです。
そのため、診療情報管理士の資格を持っていると多くの病院から貴重な人材と見なしてもらえるでしょう。
このように、病院の需要と資格の専門性のニーズが合致しており、新たに採用されやすいというメリットがあるのです。
これからも将来性がある
最近のITの発展は目覚ましく、医療関係の中でもIT化が進みつつあります。
そのような病院では、施設の経営方針の評価につなげるために診察情報管理士の数を増やしたり、経営のオートメーション化に向けてテクノロジーを導入したりすることも進んでいます。
そこで求められるのが、管理システムを熟知する専門家である診療情報管理士なのです。
つまり、今後の医療の発展やITの発達を考慮すると、診療情報管理士の需要がほぼ確実に増え続けていくことが予測できるのです。
転職せずとも収入アップを狙える
病院で働いているスタッフの方の中には、この資格を取得するように病院側に勧められたことがある人もいるのではないでしょうか?
この提案の裏では、診療情報管理士の資格を持っていれば安心してカルテや個人情報の管理に関する業務を任せることができるため、人員配置の変更を考えているという理由が考えられます。
そのため、わざわざ収入増を目指して転職活動をするよりも、この資格を取得することで収入増を実現できる可能性があります。
自分の専門的知識を学ぶ方が抵抗無く活動することができ、有意義な時間となるでしょう。
平均時給が高い
勤務先によって異なるものの、診療情報管理士は医療の専門知識や経営管理に関わる総合的な知識とスキルを要求されるため、医療関係者の中でも平均給料が高い傾向にあります。
責任が重い分、平均時給も高くなる、ということです。
求人によっては時給1500円以上の病院もあるため、非常に魅力的でしょう。
さらに、診療情報管理士は病院で働いてはいるものの、医療従事者ではありません。
そのため、看護師や医師のような夜勤はなく、労働時間や休日・福利厚生などは、病院事務の職員と同じ扱いとなるので勤務は比較的ラクと言えます。
診療情報管理士の給料の詳細はこちらをチェックしてみてください。
自分にしかできないやりがいがある
診療情報管理士になると、医療の専門知識だけでなくITやコンピュータ関連など幅広い業務に取り組まなくてはならず、様々な分野に詳しくないとこなすことができない業務を任されます。
今後、医療機関のIT化が促進されるにつれて、専門的に対応できる診療情報管理士の仕事はより重要になります。
責任感も増えますが、その分各方面から頼りにされるポジションなので、大きなやりがいを感じられるでしょう。
仕事にやりがいを求めている人や、多くの人から頼られたいと考えている人は適任と言えます。
診療情報管理士の試験日程・会場・申し込み方法
では、試験の基本的な情報についても押さえておきましょう。
試験会場は各県では行われず、全国15会場で受験することになります。試験会場については昨年度実績などを見て確認しておくと良いでしょう。
試験は年に1回実施で2月に行われ、午後1時が試験の開始時刻となります。
年に1回だけなので、一度落ちてしまうともう一年勉強しなければなりません。
なお、資格の認定日は4月1日となっています。
通信教育を受講していない場合は、受験申込書を取り寄せる必要があり、申込書の請求を郵送で行う必要があります。そのため、試験要領などが発表されたら速やかに請求しておくと良いです。
受験料は10,000円で、認定料が30,000円必要となっているため、わりとコストがかかる点に注意が必要です。
基礎分野の免除がある人の場合は、その他の受験生と同時に専門分野を解き、先に帰るというタイムスケジュールになっています。
診療情報管理士のやりがい、つらいところ
やりがい
診療情報管理士は、仕事柄医学用語だけでなくデータ管理や情報処理についても詳しくなります。
そのため、一般的な病院の事務スタッフよりも遙かに責任感と業務の負担が重く、その分医療の核心に近い部分で業務に取り組むことができるというやりがいがあります。
医師・看護士・事務スタッフからの信頼を得るためには、常に医学やデータ管理の勉強が欠かさずに自己啓発を続ける必要があります。
また、実務を通じて管理しているデータを元に説得力ある発言ができるようになれば、職場内でより信頼を得ることに繋がりさらにキャリアアップにも繋がるでしょう。
また、医師のカルテを確認し医師と患者の病名や薬剤について話し合ったりする場面も多いため、自然と薬剤に関する知識も豊富になり、私生活でもその知識を役立てることが出来ます。
自分や身近な人が体調不良になった際などに、病気や薬剤の知識を生かして周囲から頼られる存在となることもできるでしょう。
つらいところ
診療情報管理士はあまり認知度が高い資格とは言えないため「何をやっているのか分からない人」と思われがちです。
実際には責任感が重く非常に重要な仕事をしているにも関わらず、正当な評価をしてもらえないケースがあります。
事務作業がほとんどなので、淡々とこなしていくという業務形態が周囲からの評価の低さの原因です。
つらい面もある程度ありますが、それでも取得するメリットの方が大きいため、気にするほどのことではありません。
しっかりと自分の業務に集中して取り組めば、順調にキャリアアップしていけるはずです。
診療情報管理士に関するまとめ
診療情報管理士に関するまとめ
- 責任感がある仕事を任せられ、やりがいも大きい
- 試験は簡単ではなく、しっかりとした対策が必要
- 収入アップや転職に有利になるなど、メリットが多くある
- 受験資格はしっかりと確認しておくこと
診療情報管理士はしっかりと勉強時間を確保できれば独学でも合格を狙える資格です。
試験は参考書の持ち込みが禁止されていることに留意し、しっかりと覚えるべきことは覚えて試験に臨むようにしてください。
また、医療関連の仕事を希望する際には取得することで非常に大きな強みとなり、貴重な人材として評価してもらえるでしょう。
やりがいも大きく今後ますます評価が高まっていく資格なので、興味がある人はぜひ取得を検討してみてはいかがでしょうか?